物質計測制御研究室
- 坂本 哲夫 教授
極小の世界を成分ごとに観察できる質量顕微鏡装置の開発
顕微鏡の開発研究を行っています。一般的には光とレンズを使った顕微鏡を想像すると思いますが、そういった顕微鏡では「何の物質でできているか」は分かりません。当研究室で開発している顕微鏡では、細く絞ったイオンビームを試料に当て、出てきた試料原子の質量を測ることで成分を分析しています。また、この顕微鏡を用いて半導体素子、リチウムイオン電池、PM2.5や黄砂、がん細胞の内部構造の分析を進めています。これまで見えなかったものが見えたときの感動は何にも代えられません。質量顕微鏡は、エネルギー、環境、医療などの人類共通の課題すべてに役立つと考えています。宇宙で言えば、遠くの銀河を見るための望遠鏡と同じです。如何に小さい、複雑な成分の対象物を分析できるのかチャレンジしています。それが世の中にどう貢献するのかを自覚すれば、自然と研究へのモチベーションが湧いてくるはずです。
また、本研究室では週2回の研究室ゼミがあります。各々の学生の研究の進み具合をそこで議論したりします。研究成果を学生自身が発表することも大事な活動の一つだと捉えています。我々が扱う分析装置開発は、授業で学ぶこと以外の知識が必要です。学生には「勉強」をするように指導していますが、ここでいう「勉強」とは、自分の研究目標の達成に必要な知識を素早く習得することです。つまり自分で考え、調べ、やってみること。こうした工学系ならではの「センス」を身に付けさせようと心掛けています。
研究室所属学生メッセージ
中林 在(4年)
小さい頃から未知のものや目に見えないものに興味がありました。また、学生生活を通して社会や人の役に立ちたいと考えるようになり、世界最高の分解能を誇る「集束イオンビーム飛行時間型二次イオン質量分析器」の開発を続ける本研究室を志望しました。
ここでは原発の廃炉や大気汚染、隕石、生体などさまざまな分野に触れられるのが魅力の一つで、分析する試料は過去に分析されておらず、その分析法が確立されていません。そのため、分析した試料表面の分布が見られた時は非常に感動します。また学会、共同研究先との交流が盛んなのも特徴の一つです。
私の研究テーマは細胞表面に存在する元素分布の比から、がん細胞の判別を行う「がん細胞悪性度評価方法の開発」です。非常に高い面分解能による個別細胞分析を用いて、悪性度の異なるがん細胞の腫瘍内不均一性の判断を可能とする手法の開発を目指し、研究を続けていきたいです。